2026年8月アーカイブ

目次

  1. はじめに:障害対応の現場で起きている課題
  2. AIが一次調査を肩代わりする
  3. 実務に組み込むための検討ポイント
  4. まとめ:AIと共同の障害対応で改善のサイクルへ
  5. 出典


1. はじめに:障害対応の現場で起きている課題

深夜や休日に届くアラート通知。
慌ててPCを開き、メトリクス、ログ、デプロイ履歴のタブを行き来しながら、頭の中で突き合わせていく作業は、時間的にも精神的にも大きな負担です。また、素早い対応が必要な場面では「まずここを見る」という勘どころや経験値が必要で、特定のベテランエンジニアに負担が偏りがちです。

「うちは回っているから大丈夫」。そう思いつつも「あの人がいなくなったら回らない」という不安を抱える現場は多いのではないでしょうか。これは誰かのせいではなく、運用を守る責任が大きいほど改善やドキュメント化の時間が削られる、という構造的な問題です。

これを変えるのがSRE(Site Reliability Engineering)です。SREでは、運用を設計・自動化して属人化を解消するとともに、そもそも障害が発生しない仕組みを整えることを目指します。これにより、運用の負荷を下げ、運用代行のような払い続けるコストを減らしていくことができます。


そして今、AIサービスの充実によりSREを始めるハードルは大きく下がっています。
本記事では、その第一歩として、一次調査をAIに任せられるAmazon CloudWatch Investigationsをご紹介します。



2. AIが一次調査を肩代わりする

CloudWatch Investigationsは、生成AIエージェントがシステムの異常を探索し、原因候補を提示することで根本原因の特定を支援し、修復手順まで提案するサービスです。これまで人が手作業でやっていた一次調査をAIが肩代わりします。具体的には、次の4つの機能があります。

  • テレメトリの一括スキャン:指定した異常を起点に、メトリクス・ログ・変更履歴を横断で自動収集し、複数リソースが関わる場合は依存関係を視覚的に整理します。

  • 原因特定の支援:AIが提示する観察(事実)と提案を、人が採用・却下しながら仮説を詰めていきます。この採否の履歴が残るため、日常業務の中でノウハウが自然と蓄積され、ベテランの判断履歴をお手本にして他のメンバーが対応することも可能です。

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    画面イメージ(出典:AWS News Blogより改変)



  • 修復手順の提案:原因が判明すると、AWS Systems Managerのランブック(復旧手順)を候補として示します。実行前に影響範囲をプレビューでき、安全を確認したうえで実行できます(*実行にはSystems Manager Automationの利用料が発生します)。

  • ポストモーテムの支援:調査後、タイムラインや対応内容、再発防止策を含むインシデントレポートの下書きを数分で作成し、ポストモーテム(事後の振り返りと再発防止策の検討)の負荷を軽減します。


その効果は劇的であり、Amazon Kindleではサポートエンジニアの課題解決が65〜80%高速化、Amazon Musicではオンコール中の調査自動化により解決速度が2倍になったと報告されています(AIOps | Amazon CloudWatch)。


3. 実務に組み込むための検討ポイント

これだけの効果があると、導入が大変では?と身構えるかもしれませんが、始めるための設定はシンプルです。
調査グループ(Investigation Group)を作り、保持期間や暗号化などの基本設定をするだけ。エージェントのインストールもインフラ改修も要りません。

そのうえで、AIの実力を最大限に引き出すには設計・調整したいポイントがあります。実務に組み込む際の検討事項を以下の表にまとめました。

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全体を見ると「やっぱり大変そう...」と感じるかもしれません。ですが、これは一度作ればずっと効き続ける仕組みづくり。一気にすべて自社で終える必要はありません。

権限・セキュリティ設計や自動復旧の構築など、専門知識が必要な工程はプロに任せることで、確実かつスピード感をもって進められます。自社のリソースに合わせてプロのノウハウを上手く活用しながら、着実に進めていくのがおすすめです。

4. まとめ:AIと共同の障害対応で改善のサイクルへ

AIが担える範囲が広がったことで、システムの運用は「常駐して見張る仕事」から「一度きちんと設計する仕事」へと変わりつつあります。
CloudWatch Investigationsは、その変化を比較的少ないコストで体感できるサービスです。これまで属人的だった作業をAIに渡し、人は改善の設計と判断に集中する。その第一歩として最もおすすめできるものの一つです。

とはいえ、AIの権限設計、監視基盤の整備、社内フローの調整を、日々の業務に追われるなかで進めるのは簡単ではありません。

  • AIを活用したSREに興味はあるが、検証や設計の時間が取れない
  • AIサービスの知見がなく、何が正解か分からず不安だ/判断できない
  • まずは自社の運用の悩みを、雑談ベースで聞いてほしい


こうしたお悩みがあれば、私たちアクセルユニバースにお気軽にご相談ください。

私たちのSRE支援は、障害対応の件数に応じてコストが膨らむ従来の運用代行とは異なります。運用を仕組み化・構造化して提供するため費用を見通しやすく、社内の自走化が進むほど外注費用は自然と縮小していきます。
まずは一度の相談から、「運用の負荷を下げて、空いた時間を次の改善にまわしていく」理想的なサイクルを一緒に作っていきませんか?

▶お問い合わせはこちら

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なお、本記事のCloudWatch Investigationsは、AIを活用したSRE全体像でご紹介したサービスのひとつにあたります。
弊社ブログ「守る運用に改善するSREを。AIエージェントで効率的なSREの実践方法」もあわせてご覧ください。


5. 出典


深夜のアラート対応、障害調査のログ突き合わせ、セキュリティ検知のトリアージ。毎月の報告書は「異常なし」なのに、同じインシデントが繰り返される。そんなシステム運用に疲弊していませんか。

原因は担当者の能力でも姿勢でもなく、体制にあります。安定を守る責任が重いほど、改善に割く余力は構造的になくなっていくためです。このことを改善する方法がSRE(Site Reliability Engineering)ですが、必要なエンジニアリングコストの高さが導入の壁でした。この壁を下げるために、AWSは2025年末から生成AIエージェントを本格投入しました。

本記事では、AIが調査・分析・一次対応を担い、人が改善の設計と判断に集中するためのAWS生成AIサービスの全体図を示します。すべてを一度に導入する必要はありません。自社はどこから着手するか、その議論のたたき台としてご活用いただければ嬉しいです。


  1. クラウド運用とSREの違い
  2. ライフサイクル×導入成熟度に合わせたAWSサービス活用全体図
  3. 主要サービスの役割 -- 何が人手から置き換わるのか
    1. 3-1. CloudWatch investigations -- AIによる一次調査(Step 1)
    2. 3-2. AWS DevOps Agent -- 自律型のSREチームメイト(Step 2)
    3. 3-3. 検知の強化 -- GuardDuty / Security Hub / CloudWatch異常検知(Step 1)
    4. 3-4. 対応・復旧 -- Security Incident Response / Systems Manager Automation(Step 1〜2)
    5. 3-5. 予防・設計 -- Resilience Hub / AWS Security Agent(Step 2〜3)
  4. セキュリティ・統制は大丈夫?
  5. 導入の進め方 「自社の一歩目」を選ぶ
  6. おわりに

1.クラウド運用とSREの違い

本記事が扱う対象は、クラウド運用の自動化ではなくSREです。両者の役割を整理します。


cloud-operation_vs_SRE.png

安定を守る運用と、仕組みを変えるSRE。両方が揃って初めてシステムは良くなりますが、多くは後者が足りていません。運用チームでは、日々の対応に追われるなかで改善に割ける時間が確保できず、改善まで実施できない状態が続いています。SREは、改善にフォーカスしている一方、高いエンジニアリングスキルと分析工数が必要であり、取り入れるためのハードルが高い役割でした。このハードルを下げるための生成AIエージェントの登場により、SREがより身近になると考えています。

システムにまつわる部署の皆様からよく伺うお悩みも、改善を担う機能が組織にないことに起因するものが多く見られます。


Issue_and_background.png

従来、これらの解決策は「人を増やす」「運用を外部委託する」のいずれかでした。しかしどちらも「守る側」の増強であり、改善を担う機能は依然として空席のままです。生成AIエージェントの登場により、第三の選択肢である、「AIが一次対応・一次調査を担い、運用チームの負荷を下げ、生まれた余力で人が改善の設計と判断に取り組むSRE体制」が現実的になりました。運用の現場にとっても、深夜対応や手作業のトリアージから解放されることで、疲弊の解消と役割の高度化に繋がります。

実際にAWSが公開している効果として、Amazon Kindleのサポートエンジニアは課題解決が65〜80%高速化し、Amazon Musicではオンコール中の調査自動化により解決速度が2倍になったと報告されています(出典:AWS公式「AIオペレーション」)。


2.ライフサイクル×導入成熟度に合わせたAWSサービス活用全体図

AWSの生成AI関連サービスを、運用ライフサイクル(横軸) と 導入成熟度(縦軸) の2軸で整理しました。


sre_ai_aws_matrix.png


ポイントは2つです。

  1. Step 1は作るのではなく有効にするレベル。追加開発なしで始められるサービスから着手できます。
  2. Step 2以降で差がつくのは、AIそのものではなく「AIに何を教えるか」。自社の運用ノウハウをエージェントに実装できるかが分かれ目です。
  3. 構成図に落とし込むと以下のようになります。


    AI_SRE_Configuration_diagram.drawio.png


    3.主要サービスの役割 -- 何が人手から置き換わるのか

    3-1. CloudWatch investigations -- AIによる一次調査(Step 1)

    生成AIエージェントが環境内の異常を探索し、関連するシグナルを提示、根本原因の仮説を立て、修復ステップまで提案するサービスです。CloudWatchアラームからの自動起動に対応し、通知のための仕組みを構築することでSlack/Teamsとも連携。修復候補としてSystems Manager Automationのランブックを提示します。


    Systems-Manager-Automation_Runbook_1.png


    「まず何から始めるか」の答えとして最有力です。既存の監視環境にAIによる一次調査を組み込み、MTTRを短縮する----これが最小コストで得られる最初の成果になります。


    3-2. AWS DevOps Agent -- 自律型のSREチームメイト(Step 2)

    「オンコールエンジニアが朝起きたら、障害ではなく根本原因が判明している」状態を実現させるために、2026年3月31日に一般提供され始めた自律型のSREエージェントです。インシデント発生と同時に調査を開始し、テレメトリを横断的に相関分析して根本原因を特定、緩和プランまで提示します。


    DevOps-Agent_Runbook.png


    重要なのは、DevOps Agentが「ランブック/スキル」で調査を誘導する設計になっている点です。つまり、社内やパートナーに蓄積されたSREノウハウを、そのままエージェントの知識として実装できます。これはAIを単なる「作業代行」ではなく、型化されたSREへ変える仕組みです。汎用AIをそのまま使う場合との差は、ここで生まれます。


    3-3. 検知の強化 -- GuardDuty / Security Hub / CloudWatch異常検知(Step 1)


    Anomary_Detection.png


    いずれも既存機能の有効化・設定が中心で、Step 1から着手できます。


    3-4. 対応・復旧 -- Security Incident Response / Systems Manager Automation(Step 1〜2)

    • AWS Security Incident Response: セキュリティインシデント対応の調整・トリアージを支援し、対応プロセスを標準化します。
    • Systems Manager Automation: 修復手順をランブックとして定義し、AIが提案した修復を実行する「手」の役割を担います。CloudWatch investigationsの修復候補としても提示されます。
    • GuardDuty Malware Protection for AWS Backup: バックアップデータのマルウェアスキャンにより、「復旧したらマルウェアも復元された」という事態を防ぎます。

    AIの提案をそのまま自動実行するか、人の承認を挟むかは設計判断です。初期は承認フローを挟み、実績が溜まった定型対応から自動化する段階的アプローチを推奨します。


    3-5. 予防・設計 -- Resilience Hub / AWS Security Agent(Step 2〜3)

    • AWS Resilience Hub: 生成AIによる障害モード評価で、「どこが壊れたらどうなるか」を事前に洗い出します。障害対応の上流にある「障害に強い設計」を支援します。
    • AWS Security Agent(発表時プレビュー): CI/CDパイプラインに組み込み、リリース前にセキュリティ問題を検出する「シフトレフト」を実現します。


    4. セキュリティ・統制は大丈夫?

    AIに業務を任せるとき、まず設計すべきなのがエージェント自身の権限管理です。エージェントは環境を調査し、場合によっては修復を実行します。人間の管理者と同様に、「誰が・何に・どこまで」アクセスできるかの統制が必要です。


    Access_management_service_1.png


    このガバナンス設計は、マトリクスのどのStepから始める場合でも共通で必要になります。便利そうだから有効化する前に、権限設計の方針を整理しておくことをオススメします。


    5. 導入の進め方 「自社の一歩目」を選ぶ

    先ほど紹介した内容はフルセットの全体像です。実際の導入は、自社の状態に応じて必要なものを選んでいただくことから始まります。


    Implementation_process.png


    当社のSREは、運用チームと協力しながら、運用負荷を下げ、改善サイクルが回る状態を作ることを目的としています。特定業務では、将来的にアクセルユニバースが不要になることを目指して、お客様のチームに参画しています。今回紹介した生成AIエージェントの導入はこのコンセプトと同じ方向を向いており、積極的に採用・導入を提案しております。エージェントが定型対応を担い、お客様の人材は設計と判断に集中することで、外部パートナーへの依存でも、担当者の疲弊でもない、第三の運用体制を構築できると考えています。

    当社ではこれまで、クラウド移行後のお客様に対する監視構築・障害分析・セキュリティ診断などのSRE支援を行ってきました(事例)。この蓄積した運用ノウハウを、そのままエージェントのスキルとして実装できることが、生成AI時代のSRE支援における当社の強みです。


    6. おわりに

    SRE×生成AI×AWSの全体図として、運用ライフサイクル×導入成熟度のマトリクスと、主要サービスの役割を紹介しました。今後、CloudWatch investigationsやAWS DevOps Agentなど、個別サービスの紹介記事も順次公開していく予定です。 自社の場合はどこから着手すべきか議論してみたい、という方はぜひお問い合わせください。貴社の状態に合わせた「一歩目」を一緒に整理しましょう。


    参考・出典

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