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技術ブログ
守る運用に改善するSREを。AIエージェントで効率的なSREの実践方法
深夜のアラート対応、障害調査のログ突き合わせ、セキュリティ検知のトリアージ。毎月の報告書は「異常なし」なのに、同じインシデントが繰り返される。そんなシステム運用に疲弊していませんか。
原因は担当者の能力でも姿勢でもなく、体制にあります。安定を守る責任が重いほど、改善に割く余力は構造的になくなっていくためです。このことを改善する方法がSRE(Site Reliability Engineering)ですが、必要なエンジニアリングコストの高さが導入の壁でした。この壁を下げるために、AWSは2025年末から生成AIエージェントを本格投入しました。
本記事では、AIが調査・分析・一次対応を担い、人が改善の設計と判断に集中するためのAWS生成AIサービスの全体図を示します。すべてを一度に導入する必要はありません。自社はどこから着手するか、その議論のたたき台としてご活用いただければ嬉しいです。
- クラウド運用とSREの違い
- ライフサイクル×導入成熟度に合わせたAWSサービス活用全体図
- 主要サービスの役割 -- 何が人手から置き換わるのか
- 3-1. CloudWatch investigations -- AIによる一次調査(Step 1)
- 3-2. AWS DevOps Agent -- 自律型のSREチームメイト(Step 2)
- 3-3. 検知の強化 -- GuardDuty / Security Hub / CloudWatch異常検知(Step 1)
- 3-4. 対応・復旧 -- Security Incident Response / Systems Manager Automation(Step 1〜2)
- 3-5. 予防・設計 -- Resilience Hub / AWS Security Agent(Step 2〜3)
- セキュリティ・統制は大丈夫?
- 導入の進め方 「自社の一歩目」を選ぶ
- おわりに
1.クラウド運用とSREの違い
本記事が扱う対象は、クラウド運用の自動化ではなくSREです。両者の役割を整理します。
安定を守る運用と、仕組みを変えるSRE。両方が揃って初めてシステムは良くなりますが、多くは後者が足りていません。運用チームでは、日々の対応に追われるなかで改善に割ける時間が確保できず、改善まで実施できない状態が続いています。SREは、改善にフォーカスしている一方、高いエンジニアリングスキルと分析工数が必要であり、取り入れるためのハードルが高い役割でした。このハードルを下げるための生成AIエージェントの登場により、SREがより身近になると考えています。
システムにまつわる部署の皆様からよく伺うお悩みも、改善を担う機能が組織にないことに起因するものが多く見られます。
従来、これらの解決策は「人を増やす」「運用を外部委託する」のいずれかでした。しかしどちらも「守る側」の増強であり、改善を担う機能は依然として空席のままです。生成AIエージェントの登場により、第三の選択肢である、「AIが一次対応・一次調査を担い、運用チームの負荷を下げ、生まれた余力で人が改善の設計と判断に取り組むSRE体制」が現実的になりました。運用の現場にとっても、深夜対応や手作業のトリアージから解放されることで、疲弊の解消と役割の高度化に繋がります。
実際にAWSが公開している効果として、Amazon Kindleのサポートエンジニアは課題解決が65〜80%高速化し、Amazon Musicではオンコール中の調査自動化により解決速度が2倍になったと報告されています(出典:AWS公式「AIオペレーション」)。
2.ライフサイクル×導入成熟度に合わせたAWSサービス活用全体図
AWSの生成AI関連サービスを、運用ライフサイクル(横軸) と 導入成熟度(縦軸) の2軸で整理しました。
ポイントは2つです。
- Step 1は作るのではなく有効にするレベル。追加開発なしで始められるサービスから着手できます。
- Step 2以降で差がつくのは、AIそのものではなく「AIに何を教えるか」。自社の運用ノウハウをエージェントに実装できるかが分かれ目です。
- AWS Security Incident Response: セキュリティインシデント対応の調整・トリアージを支援し、対応プロセスを標準化します。
- Systems Manager Automation: 修復手順をランブックとして定義し、AIが提案した修復を実行する「手」の役割を担います。CloudWatch investigationsの修復候補としても提示されます。
- GuardDuty Malware Protection for AWS Backup: バックアップデータのマルウェアスキャンにより、「復旧したらマルウェアも復元された」という事態を防ぎます。
- AWS Resilience Hub: 生成AIによる障害モード評価で、「どこが壊れたらどうなるか」を事前に洗い出します。障害対応の上流にある「障害に強い設計」を支援します。
- AWS Security Agent(発表時プレビュー): CI/CDパイプラインに組み込み、リリース前にセキュリティ問題を検出する「シフトレフト」を実現します。
- AI オペレーション | Amazon CloudWatch(AWS公式)-- Kindle/Amazon Musicの導入効果の出典
- AWS DevOps Agent の一般提供開始のお知らせ(AWS公式ブログ、2026年3月31日)
- CloudWatch 調査(AWS公式ドキュメント)
- AWS re:Invent 2025 で発表された AI を活用したセキュリティイノベーション(AWS公式ブログ) -- Security Agent / GuardDuty拡張 / Security Hub / IAM policy autopilot 等の出典
3.主要サービスの役割 -- 何が人手から置き換わるのか
3-1. CloudWatch investigations -- AIによる一次調査(Step 1)
生成AIエージェントが環境内の異常を探索し、関連するシグナルを提示、根本原因の仮説を立て、修復ステップまで提案するサービスです。CloudWatchアラームからの自動起動に対応し、通知のための仕組みを構築することでSlack/Teamsとも連携。修復候補としてSystems Manager Automationのランブックを提示します。

「まず何から始めるか」の答えとして最有力です。既存の監視環境にAIによる一次調査を組み込み、MTTRを短縮する----これが最小コストで得られる最初の成果になります。
3-2. AWS DevOps Agent -- 自律型のSREチームメイト(Step 2)
「オンコールエンジニアが朝起きたら、障害ではなく根本原因が判明している」状態を実現させるために、2026年3月31日に一般提供され始めた自律型のSREエージェントです。インシデント発生と同時に調査を開始し、テレメトリを横断的に相関分析して根本原因を特定、緩和プランまで提示します。

重要なのは、DevOps Agentが「ランブック/スキル」で調査を誘導する設計になっている点です。つまり、社内やパートナーに蓄積されたSREノウハウを、そのままエージェントの知識として実装できます。これはAIを単なる「作業代行」ではなく、型化されたSREへ変える仕組みです。汎用AIをそのまま使う場合との差は、ここで生まれます。
3-3. 検知の強化 -- GuardDuty / Security Hub / CloudWatch異常検知(Step 1)

いずれも既存機能の有効化・設定が中心で、Step 1から着手できます。
3-4. 対応・復旧 -- Security Incident Response / Systems Manager Automation(Step 1〜2)
AIの提案をそのまま自動実行するか、人の承認を挟むかは設計判断です。初期は承認フローを挟み、実績が溜まった定型対応から自動化する段階的アプローチを推奨します。
3-5. 予防・設計 -- Resilience Hub / AWS Security Agent(Step 2〜3)
4. セキュリティ・統制は大丈夫?
AIに業務を任せるとき、まず設計すべきなのがエージェント自身の権限管理です。エージェントは環境を調査し、場合によっては修復を実行します。人間の管理者と同様に、「誰が・何に・どこまで」アクセスできるかの統制が必要です。

このガバナンス設計は、マトリクスのどのStepから始める場合でも共通で必要になります。便利そうだから有効化する前に、権限設計の方針を整理しておくことをオススメします。
5. 導入の進め方 「自社の一歩目」を選ぶ
先ほど紹介した内容はフルセットの全体像です。実際の導入は、自社の状態に応じて必要なものを選んでいただくことから始まります。

当社のSREは、運用チームと協力しながら、運用負荷を下げ、改善サイクルが回る状態を作ることを目的としています。特定業務では、将来的にアクセルユニバースが不要になることを目指して、お客様のチームに参画しています。今回紹介した生成AIエージェントの導入はこのコンセプトと同じ方向を向いており、積極的に採用・導入を提案しております。エージェントが定型対応を担い、お客様の人材は設計と判断に集中することで、外部パートナーへの依存でも、担当者の疲弊でもない、第三の運用体制を構築できると考えています。
当社ではこれまで、クラウド移行後のお客様に対する監視構築・障害分析・セキュリティ診断などのSRE支援を行ってきました(事例)。この蓄積した運用ノウハウを、そのままエージェントのスキルとして実装できることが、生成AI時代のSRE支援における当社の強みです。
6. おわりに
SRE×生成AI×AWSの全体図として、運用ライフサイクル×導入成熟度のマトリクスと、主要サービスの役割を紹介しました。今後、CloudWatch investigationsやAWS DevOps Agentなど、個別サービスの紹介記事も順次公開していく予定です。 自社の場合はどこから着手すべきか議論してみたい、という方はぜひお問い合わせください。貴社の状態に合わせた「一歩目」を一緒に整理しましょう。