DEVELOPER’s BLOG

技術ブログ

AWS Network Firewall:シンプルな非機能要件に対して、過剰な設計をしていませんか?

2025.11.27 鈴木 萌子
AWS SRE
AWS Network Firewall:シンプルな非機能要件に対して、過剰な設計をしていませんか?



はじめに

AWSでは、あらゆるユースケースを支える豊富なサービス群が提供されています。 しかし、その選択肢の多さゆえに「本当に必要な要件以上のサービスを導入してしまう」ケースも少なくありません。

特に、非機能要件に対して、必要以上に複雑な構成を採用してしまうと、以下のようなデメリットにつながることがあります。

  • AWSコストの増大
  • 運用負荷の上昇
  • トラブルシューティングの難化


本記事では、過剰設計の一例を通して、コスト最適化やシンプルな設計の重要性を考えます。


シナリオ:ネットワーク制御要件を満たすための設計


想定要件

あるシステムで、次のような非機能要件が挙がったとします。

  • 「WebサーバからのみDBサーバに接続を許可したい」
  • 「SSH接続を特定のグローバルIPアドレスからのみ許可したい」


この要件は非常に一般的です。しかし、このようなシンプルなネットワーク制御要件に対して、意図せず次のような構成を取っていないでしょうか?


過剰な構成の例

  • とりあえずAWS Network Firewallを導入

シンプルな非機能要件に対して、過剰なAWSサービスを採用していませんか?_図1図1


一見「セキュリティを強化した構成」に見えますが、実際には Security Groupだけで十分なケースも多く存在します。


適材適所の判断をする


Security Group で十分なケース

  • 同一VPC内のAWSサービス間通信制御
  • L3/L4(ネットワーク/トランスポート層)レベルのアクセス制御

シンプルな非機能要件に対して、過剰なAWSサービスを採用していませんか?_図2図2


これらはステートフルな通信制御が可能な Security Group で実現可能です。 設定も容易で、コストも追加料金なしです。


AWS Network Firewall が必要なケース

一方、AWS Network Firewall が適しているのは次のようなケースです。

  • L3/L4(ネットワーク/トランスポート層)レベルからL7(アプリケーション層)レベルまでのアクセス制御が必要
  • ステートフルだけではなくステートレス制御も必要
  • 高度なネットワークトラフィックの検査・分析が必要


※以下はAWS Network Firewallを導入する大まかなイメージです。


これらは単純なSecurity Groupでは対応が難しい要件です。 AWS Network Firewallの導入は、こうした明確な理由がある場合に初めてコストに見合った効果を発揮します。


コスト最適化の視点

AWS Network Firewallは強力なサービスですが、利用するたびにオンデマンド料金が発生します。1つのVPCにデプロイしただけでも、Firewall Endpoints利用料金が継続的に発生します。

単に「セキュリティを強化したいから」といった曖昧な理由で導入してしまうと、月額数万円〜数十万円規模のコストが恒常的に発生するケースもあります。

さらに、アクセス数が多いかつ大きなデータを扱うシステムの場合には、データ処理料金も月額数万円規模で発生する可能性があります。


シンプル設計を意識する

非機能要件に対しては、まず最小限の構成で実現可能かを検討することが重要です。Security Groupで要件を満たせるのであれば、まずはそこから始めてみましょう。


まとめ

  • 非機能要件に対して、本当にそのAWSサービスが必要かを見直す
  • Security Groupなどの無料で提供される基本機能を活用する
  • AWS Network Firewallなどの高機能サービスは明確な根拠がある場合に導入する
  • コスト最適化は設計段階から意識する


AWSの設計に「正解」はありませんが、「なぜその構成にしたのか」を説明できることが、アーキテクトとして最も重要なスキルです。

関連記事

踏み台EC2からセッションマネージャーへの移行の推奨

はじめに 踏み台EC2の課題 セッションマネージャーを使用した構成 セッションマネージャーの利点 まとめ はじめに アプリケーションEC2への接続手段として、従来は「踏み台EC2(Bastion Host)」を構築してSSH接続する方法が一般的でした。 しかし、現在はその手法は必ずしも効率的とは言えなくなっています。 現在はAWS Systems Manager Session Manager(SSM セッションマネージャー)を利用す

記事詳細
踏み台EC2からセッションマネージャーへの移行の推奨
AWS
SRE:AWSのインフラ費用削減の進め方紹介

目次 はじめに 進め方概要 ステップ① コスト削減 コスト最適化支援 施策実施 ステップ② 継続運用の体制を構築 運用設計支援 監視基盤構築 AWS Cost Anomaly Detection とは ステップ③ 予防処置の体制を構築 運用設計支援 AWS Budgets とは AIを活用した予兆検知基盤構築 おわりに はじめに みなさんこんにちは。インフラエンジニアの伊達です。 やはり何事もコストは最小限で済ませたいものですよね。 システムは大きな問題も

記事詳細
SRE:AWSのインフラ費用削減の進め方紹介
AWS SRE
AWSのインフラコスト見積もりでの「この値なに?」をちょっと解説(AWS Fargate編)

目次 はじめに AWS Fargateの選択・入力項目 ・説明 ・ロケーションタイプを選択 ・リージョンを選択 ・オペレーティングシステム ・CPUアーキテクチャ ・タスクまたはポッドの数 ・平均期間 ・割り当てられたvCPU の量 ・割り当てたメモリ量 ・Amazon ECS に割り当てられたエフェメラルストレージの量 まとめ はじめに AWSのインフラコスト見積もりでおなじみのAWS Pricing Calculator、 リストから選択あるいは値を入

記事詳細
AWSのインフラコスト見積もりでの「この値なに?」をちょっと解説(AWS Fargate編)
AWS
分析は、会話でできる─AIエージェントで変わる顧客データの使い方

はじめに:顧客データ活用が進まない AIエージェントを利用した顧客データ活用環境(Amazon Bedrock) AIエージェントで顧客データを分析する まとめ:スモールスタートで始める顧客データ活用 1.はじめに:顧客データ活用が進まない 「顧客データをもっと活用したい」という声をよく耳にします。購買データ、会員データ、来店履歴、キャンペーンの反応率など、日々さまざまなデータが蓄積されていますが、それらを活用して顧客理解を深め、顧客体験

記事詳細
分析は、会話でできる─AIエージェントで変わる顧客データの使い方
AWS 生成AI

お問い合わせはこちらから