2025年4月アーカイブ


  1. 企業のシステム選びにおける選択肢
  2. パッケージとオーダーメイド開発の比較
  3. オーダーメイド開発で競争力を強化する最新アプローチ
  4. オーダーメイド開発が向いている企業とは?
  5. まとめ


1.企業のシステム選びにおける選択肢

近年、企業のデジタル変革が加速する中で、自社に最適なシステムを選定することが、競争力を左右する重要な要素となっています。企業がシステムを導入する際の選択肢として、大きく分けて「パッケージ※1」と「オーダーメイド開発」の2つがあります。

パッケージは、短期間で導入できる手軽さや初期コストの低さが魅力ですが、業務に完全にフィットしない場合もあります。

一方、オーダーメイド開発は、企業の独自性や成長戦略に応じた柔軟なシステムを構築できるメリットがありますが、その分コストや開発期間が課題となることもあります。

企業の成長フェーズやビジネス要件によって、どちらの選択肢が適しているのかは変わってきます。本記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較し、オーダーメイド開発を活用して競争力を強化するアプローチについて解説します。


2.パッケージとオーダーメイド開発の比較

2-1. パッケージのメリット・デメリット

パッケージは、一般的にクラウドサービスや既存のソフトウェアとして提供されることが多く、迅速な導入と低コストが大きな利点です。しかし、業務プロセスとの適合度やカスタマイズの自由度に課題がある場合もあります。

メリット

  • 導入スピードが速い:すでに完成されたシステムのため、短期間で利用を開始できる。
  • 初期コストが低い:開発費用が不要であり、月額課金などの形でコストを抑えられる。
  • 運用・保守の負担が少ない:ベンダーが管理・保守を行うため、自社のITリソースを節約できる。
  • 最新技術の適用が容易:自動アップデートが提供されるため、常に最新の機能を利用可能。

デメリット

  • カスタマイズ性の制限:業務に完全に適合しない可能性があり、要件を満たせない場合もある。
  • データ管理の課題:機密データを外部のクラウドに保存するため、セキュリティやデータガバナンスの面でリスクが生じる。
  • ランニングコストの増大:月額課金制のため、長期的に利用すると総コストが高くなることがある。
  • 他システムとの連携が難しい:既存のシステムとの統合に制限があり、運用フローに制約が出る可能性がある。
  • バージョンアップの度に追加コストが発生:バージョンアップ時にカスタマイズ部分の修正や、新機能利用・プラン変更・外部連携に伴う追加ライセンス費用が発生し、想定外のコストにつながることがある。


2-2. オーダーメイド開発のメリット・デメリット

オーダーメイド開発は、企業の業務プロセスに完全に適合するシステムを構築できるため、競争力の強化に貢献します。しかし、開発には時間とコストがかかり、運用・保守の負担も考慮する必要があります。

メリット

  • 業務に最適化したシステム構築:企業独自の業務フローや要件に完全に適合したシステムを開発可能。
  • 高い拡張性と柔軟性:将来的なビジネス拡大や業務変更に応じたシステムの拡張が容易。
  • セキュリティの強化:自社環境でのデータ管理が可能なため、情報漏えいリスクを軽減できる。
  • 他システムとのスムーズな連携:既存システムや外部ツールと柔軟に統合し、業務プロセスを最適化できる。

デメリット

  • 開発コストが高い:ゼロから開発するため、初期投資が大きくなる。
  • 導入までの期間が長い:要件定義、設計、開発、テストなどの工程を経るため、導入に時間がかかる。
  • 運用・保守の負担が大きい:システムの管理・保守を自社で行う必要があり、ITリソースの確保が必要。
  • 開発リスクがある:要件変更や開発遅延が発生する可能性があり、適切なプロジェクト管理が求められる。


3. オーダーメイド開発で競争力を強化する最新アプローチ

3-1. データ連携で業務を効率化

近年、多くの企業がデータドリブン経営を重視し、業務プロセスの最適化を進めています。
また、複数のSaaSを導入したものの、データが連携できずに手間が増えるという問題が発生しやすいという状況もよく耳にします。オーダーメイド開発では、社内外のデータを統合し、シームレスな連携を実現することで業務の効率化が可能です。

データ連携のポイント

異なるシステム間のデータ統合:ERP(Enterprise Resource Planning)、CRM(Customer Relationship Management)、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールなど複数のシステムを連携し、一元管理を可能にします。

  • リアルタイムデータ処理:APIやETLツールを活用し、リアルタイムでデータを取得・分析する。
  • データの可視化:ダッシュボードを活用して、業務のKPIをリアルタイムで確認できる環境を整備する。

データ連携を強化することで、意思決定のスピードを向上させ、業務の最適化が可能になります。


3-2. 連携したデータを活用し、生成AIで高度なデータ分析を実現

データ連携を活用することで、企業は生成AIを駆使した高度なデータ分析を実現できます。
生成AIは、膨大なデータセットから有益なパターンやトレンドを抽出し、意思決定の質を向上させる強力なツールとなります。

生成AIを活用したデータ分析のメリット

  • 予測分析の高度化:市場動向や顧客行動を予測し、ビジネス戦略を最適化できる。
  • 異常検知の強化:システム障害や不正行為の兆候を自動検出し、リスクを低減。
  • 業務プロセスの自動化:データ入力やレポート作成などの作業を自動化し、効率を向上。
  • パーソナライズされたサービス提供:顧客データを分析し、個別最適化されたマーケティング施策を実施。

これにより、企業は競争力を強化し、データドリブンな経営判断を行うことができます。


4. オーダーメイド開発が向いている企業とは?

向いている企業の特徴

  • 独自の業務プロセスを持つ企業:標準的なパッケージでは対応できない業務を持つ企業。
  • 競争優位性を高めたい企業:ITシステムを差別化要因として活用したい企業。
  • 長期的な視点でIT投資を行う企業:初期コストは高いが、中長期的な運用コストを抑えたい企業。
  • データを活用した意思決定を行いたい企業:業務データの分析やAI活用を積極的に推進したい企業。

導入に適したタイミング

  • 事業拡大・新規事業立ち上げ時:ビジネスの拡張に合わせた最適なシステム構築が可能。
  • 既存システムの老朽化・限界時:パッケージの制約が業務のボトルネックになっている場合。
  • 業務効率化の必要性が高まった時:手作業の削減やデータ活用を強化したいタイミング。
  • 競争優位性を確立したい時:市場での差別化戦略としてITを活用する必要がある場合。


実際の成功事例

事例1:製造業の生産管理システム刷新

ある製造業の企業では、パッケージのERPシステムを利用していましたが、工場ごとに異なる生産管理フローに対応できず、業務の効率が低下していました。そこでオーダーメイド開発による生産管理システムを導入。

結果

  • 工場ごとの業務フローに最適化されたシステムで作業時間を20%削減。
  • 在庫管理の精度向上により、材料の無駄を30%削減。
  • 各工場のデータを統合し、経営層がリアルタイムで状況を把握可能に。


事例2:EC企業のデータドリブンマーケティング基盤を構築

急成長中のEC企業では、複数のパッケージツールを組み合わせたマーケティング分析を行っていましたが、データの分断が課題でした。そこでオーダーメイド開発によるデータドリブンマーケティング基盤を構築。

結果

  • 顧客データを統合した分析基盤を構築。
  • AIを活用した購買予測アルゴリズムを開発し、リピート率を15%向上。
  • キャンペーン施策の効果測定を自動化し、マーケティング施策の最適化を実現。


5.まとめ

一品物だからこそ生まれる価値、オーダーメイド開発で競争力を最大化

企業のITシステム選定において、パッケージとオーダーメイド開発にはそれぞれのメリット・デメリットがあります。短期間で導入しやすいパッケージは、コストを抑えつつ標準化された機能を活用したい企業に適しています。一方で、オーダーメイド開発は、独自の業務プロセスに最適化したシステムを構築し、競争優位性を確立したい企業にとって有効な選択肢です。

特に、事業の成長に伴い標準的なシステムでは対応しきれなくなった場合や、より高度なデータ活用を推進する必要がある場合には、オーダーメイド開発の価値が高まります。実際に、製造業やEC業界では、オーダーメイドシステムの導入によって業務効率化や売上向上につながった成功事例が多数存在します。 自社の現状や将来のビジョンを見据えた上で、最適なITシステムを選定し、競争力の強化につなげていきましょう。

アクセルユニバースでは、こうした企業の課題に対し、「フルスクラッチによるオーダーメイド開発」はもちろんのこと、「既存パッケージ(SaaS)導入後の活用最大化」にも対応しています。 例えば、複数のSaaSを導入している企業では、各ツール間の連携不足により、同じデータを何度も入力する手間が発生したり、重複した業務プロセスがボトルネックになることがあります。

当社は、これらの課題に対して、SaaS間のスムーズなデータ連携や自動化の仕組みを提供し、反復作業を最小化しながら全体最適を実現するIT基盤の構築を支援しています。業務の現場レベルから経営判断に至るまで、企業全体の効率化と意思決定の迅速化を実現するために、最適なシステムアーキテクチャを一緒に考えていきましょう。 オーダーメイド開発か、パッケージの最適活用か----貴社の課題や状況に応じて、最良の答えをご提案します。


※1 本記事では、SaaSなどのクラウド型サービスを含めた既製システムを「パッケージ」としています。


  1. はじめに
  2. 「ゼロトラスト」の考え方を取り入れる
  3. 設定ミスを防ぐ!インフラのコード化(IaC)を活用
  4. 「監視」と「インシデント対応」の自動化を強化
  5. セキュリティパッチの適用を自動化する
  6. 社員のセキュリティ意識を高める
  7. まとめ


1.はじめに

最近、「クラウドを導入したものの、セキュリティ運用が複雑になって管理が大変...」といったお悩みを耳にすることが増えました。クラウドの柔軟性や拡張性を活かしつつ、どうすればセキュリティリスクを最小限に抑えられるのでしょうか?

そこで今回は SRE(Site Reliability Engineering)の考え方を活用したセキュリティ運用の最適化 について、5つのポイントにまとめました。情報システム部やシステムを管理されている総務部の皆さまに役立つ内容になっていますので、ぜひチェックしてみてください。


2.「ゼロトラスト」の考え方を取り入れる

これまでの企業ネットワークでは、「社内ネットワーク=安全」「外部=危険」という境界型セキュリティの考え方が主流でした。

しかし、VPN で社内ネットワークに接続するだけで自由にシステムへアクセスできる環境では、攻撃者が VPN 認証さえ突破すれば、内部のデータや重要なシステムに簡単に侵入できてしまいます。

そこで注目されているのが、ゼロトラスト(Zero Trust)の考え方です。ゼロトラストでは、「何も信用しない(Never Trust、 Always Verify)」を前提に、社内外のすべてのアクセスを検証し、必要最低限​​の権限のみを付与することで、セキュリティリスクを極力抑えます。

ゼロトラストを実現する3つのポイント

ゼロトラストの考え方を企業のセキュリティ運用に取り入れるためには、認証・アクセス制御・権限管理の3つの要素を徹底することが重要です。

check①最小権限の原則(PoLP:Principle of Least Privilege)を徹底
➡ 必要最低限のアクセス権しか与えないことで、万が一の不正アクセス被害を抑えます。

check②多要素認証(MFA)の導入
➡ パスワード+ワンタイムパスワードなど、複数の認証要素を組み合わせることでセキュリティ強化ができます。

check③端末や場所に応じたアクセス制御
➡ たとえば「日本国内の社用PCからのみアクセス可能」など、細かくルールを設定すると安心です。

ゼロトラストを意識することで、「誰でもどこからでもアクセスできる」リスクを最小限にできます。

※関連記事:VPNリスクの終焉とゼロトラスト時代のセキュリティ運用とは?


3. 設定ミスを防ぐ!インフラのコード化(IaC)を活用

クラウド環境では、設定のわずかなミスが大きなセキュリティリスクにつながることがあります。特に「うっかりパブリックに公開されていた...」といった事態は絶対に避けたいですよね。

そこでおすすめなのが Infrastructure as Code(IaC) を活用した運用です。

Infrastructure as Code(IaC)とは?

Infrastructure as Code(IaC)とは、クラウドのインフラ設定をコードとして管理し、自動的に構築・変更できる仕組みのことです。 クラウド環境では、サーバー・ネットワーク・ストレージなどのインフラを手動で設定するのではなく、プログラムコードとして行わなくても、環境構築の自動化と継続性を確保できます。

check①設定をコード化し、変更履歴を管理
➡ TerraformやAWS CloudFormationを使えば、「誰が」「いつ」「どんな変更をしたか」がすぐにわかるようになります。

check② 自動チェックを組み込み、設定ミスを防ぐ
➡ OPA(Open Policy Agent)やCheckovなどのツールを活用すると、セキュリティポリシーに違反する設定を事前に検出できます。

人手によるミスを減らし、セキュリティを一貫して守れる仕組みを作ることが大切です。


4. 「監視」と「インシデント対応」の自動化を強化

「セキュリティインシデントは起こらないのが理想」ですが、 現実的にはどんなに対策をしても100%防ぐことはできません。 だからこそ、「早く気づいて、すぐに対応する」仕組みが必要です。

check①SEIM(Security Information and Event Management)の活用
➡ AWS GuardDuty、Google Chronicle、Splunkなどを使ってログを集約し、異常を検知できます。

check②ログを一元管理し、自動分析を導入
➡ ELK StackやCloudWatch Logsを活用すると、異常な動きをすぐにキャッチできます。

check③SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)の導入
➡ セキュリティインシデントが発生したら、事前に設定したルールに基づいて自動で対処します。(たとえば特定のIPアドレスを即ブロックするなど)

SREの視点では 「インシデントは発生するもの」と捉え、素早く検知し対応できる仕組み を整えることがポイントです。


5. セキュリティパッチの適用を自動化する

クラウド環境では、OSやミドルウェアの脆弱性が次々と発見されます。セキュリティパッチを適用しないと、 攻撃の標的になりやすくなる ので要注意です。

check①自動パッチ適用の仕組みを構築
➡ AWS Systems Manager Patch ManagerやGoogle OS Patch Managementを活用すると、自動でパッチ適用が可能です。

check②脆弱性スキャンツールを活用
➡ Amazon InspectorやAqua Securityを使えば、脆弱性のあるコンポーネントを事前にチェックできます。

「忙しくて対応できなかった...」を防ぐためにも、自動化を取り入れることが重要です!


6. 社員のセキュリティ意識を高める

どんなに技術的な対策を講じても、 人的ミスやフィッシング詐欺による情報漏洩が原因でセキュリティ事故が発生するケースは少なくありません。

check①定期的なセキュリティ研修を実施
➡ フィッシング詐欺の実例を紹介しながら、「自分ごと」として学べる場を作るのが効果的です。

check②セキュリティSLO(Service Level Objective)を設定
➡ たとえば「全社のパスワード変更率90%以上」など、具体的な目標を掲げることで意識向上につながります。

check③インシデント対応の訓練を実施
➡ 「もしも社内で情報漏洩が起きたら?」といったシナリオを想定し、実際に対応できるかシミュレーションを行うとよいでしょう。

結局のところ、 セキュリティは「仕組み」だけでなく「人の意識」も大きく関わるもの。全員で意識を高めていくことが大切です。


7.まとめ

クラウド環境でのセキュリティ運用を最適化するために、SREの視点から 5つのポイント をご紹介しました。

■ ゼロトラストの導入で、不正アクセスを防ぐ
■ 設定ミスを防ぐために、IaCを活用する
■ セキュリティ監視を自動化し、迅速に対応する
■ セキュリティパッチ適用を自動化し、リスクを最小限に
■ 社員のセキュリティ意識を高め、人的ミスを防ぐ

「自社のセキュリティ運用、もっと最適化したい!」という方は、ぜひSREのアプローチを取り入れてみてください。不安な点や、「自社の環境でも導入・運用が可能なのか?」といった疑問があれば、どうぞお気軽にアクセルユニバースまでご相談ください。SREの導入や最適な運用体制づくりを、専門のチームが丁寧にサポートいたします。


  1. はじめに
  2. VPNに潜む"突破される前提"のリスク
  3. ゼロトラストとは? 「信用せず、常に検証する」
  4. ゼロトラスト実現の3つの技術要素
  5. 専用製品がなくても始められるゼロトラスト
  6. ゼロトラストがもたらす運用の最適化
  7. まとめ:ゼロトラストは「思想」であり、今すぐ始められる改革


1.はじめに

近年、リモートワークやクラウド活用が急速に進んだことで、企業のセキュリティモデルも大きな転換期を迎えています。従来の「社内ネットワーク=安全」という前提のもと構築された境界型セキュリティは、もはや万能ではありません。
特に注目されているのが「ゼロトラスト」という新たなセキュリティモデルです。本記事では、VPNのリスクを再認識しつつ、ゼロトラストをいかに実践的かつ段階的に導入できるかについて、日々の運用に直結する視点で掘り下げていきます。


2.VPNに潜む"突破される前提"のリスク

VPNは、長らくテレワーク環境でのセキュリティ手段として広く使われてきました。しかし、VPN装置の脆弱性を突いた不正アクセスは、企業や公的機関でも後を絶ちません。
たとえば2020年、ある官公庁ではVPN経由で1年以上にわたり不正アクセスが行われ、内部システムが侵害されました。また、某大手ゲーム会社では、古いVPN機器が踏み台にされ社内ネットワークへの侵入を許してしまい、顧客情報流出という深刻なインシデントに発展しています。
VPNが破られると、まるで「社内に鍵のない裏口ができた」状態になり、攻撃者は内部のどこまでも自由に移動できてしまいます。この「一度突破されたら終わり」という構造こそが、VPN最大の弱点なのです。


3.ゼロトラストとは? 「信用せず、常に検証する」

ゼロトラストは、「ネットワークの内側にいるから安全」という発想を根本から覆すモデルです。
その基本原則は非常にシンプルで、"Never Trust, Always Verify(決して信頼せず、常に検証する)" です。
ネットワークの内外を問わず、すべてのアクセスに対して認証・監視・制御を行うことで、内部での不正アクセスや"ラテラルムーブメント(横方向の攻撃の横展開)"を防ぐことができます。
重要なのは、「検証された結果としてのみアクセスが許可される」ことです。
これにより、「VPNで入ることができれば、すべての社内リソースに触れられる」といったリスクを根本から排除できます。


4.ゼロトラスト実現の3つの技術要素

ゼロトラストを実現するには、以下の3つの技術を柱として導入することが効果的です。

4-1. 多要素認証(MFA)

パスワードに加え、スマホ認証・生体認証・ワンタイムパスワード(OTP)などを組み合わせた認証方式です。
たとえパスワードが漏洩しても、他の要素がなければ突破できません。
特にVPNやクラウドアプリケーションへのアクセスには、最低限MFAを必須化すべきです。


4-2. マイクロセグメンテーション

ネットワークをアプリケーション単位・業務単位で細かく分割し、セグメント間の通信を厳格に制御します。万が一侵入されても攻撃の横展開を防げるため、ダメージを局所化できます。


4-3. 最小権限の原則(Least Privilege)

ユーザーやデバイスに業務上本当に必要なアクセス権のみを与える設計思想です。過剰な権限は脆弱性を生みます。これを徹底することで、万一の内部不正や誤操作にも強くなります。


5.専用製品がなくても始められるゼロトラスト

「ゼロトラスト=高額なソリューション導入が必要」と思われがちですが、実際には既存環境で工夫しながら段階的に取り組むことが可能です。

  • VPN+MFAの導入から
    既存VPNや社内アプリケーションに、スマホ認証アプリ(Google Authenticator等)によるOTP認証を組み合わせることで、MFAをすぐに実装できます。

  • ACL(Access Control List)やVLAN(Virtual Local Area Network)による論理分離
    ファイアウォールやスイッチの設定を見直し、部署・業務単位で通信を分離しましょう。マイクロセグメンテーションの簡易版として有効です。

  • 権限棚卸しとIAMの活用
    特権アカウントの整理、不要な共有アカウントの廃止を徹底し、IAMを活用した最小権限の実現を図りましょう。あわせて、SSO基盤を整備することで、アクセス管理の一元化とユーザー利便性の両立も可能になります。


6.ゼロトラストがもたらす運用の最適化

ゼロトラストの導入は、単にセキュリティを強化するだけではありません。
セキュリティ運用そのものを「効率化」するという側面も持ち合わせています。

  • アクセス制御の一元管理により、ポリシーの散在や重複を排除

  • 統合ログ監視による可視性の向上と、インシデント対応の迅速化

  • 同一ポリシー適用により、社内外でのルールのばらつきが解消

  • 管理対象の削減により、IT部門の負担が軽減

これにより、人的ミスの削減、コスト圧縮、そしてIT担当者の工数確保につながります。


7.まとめ:ゼロトラストは「思想」であり、今すぐ始められる改革

ゼロトラストは、単なるセキュリティ製品ではなく「思想」と「戦略」です。まずは、VPN+ID/パスワードの限界を正しく認識するところから始めましょう。
そしてMFAやネットワーク分離、権限整理といった今あるリソースでできることから一歩ずつ取り入れることで、リスクを大幅に減らし、運用も効率化できます。
「社内だから信頼する」という思い込みを捨て、「誰であっても、常に検証する」という新しい常識をチーム全体に浸透させていくことが、次世代のセキュリティ体制構築への第一歩となります。

このアーカイブについて

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