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SREの現場でよく使われる用語3選
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- はじめに
- エラーバジェット(Error Budget):開発スピードと信頼性のバランス
- ポストモーテム(Postmortem):障害から学ぶ文化
- トイル(Toil):非効率な運用作業を削減する
- まとめ
1.はじめに
日々進化するデジタルサービスの世界では、システムの安定性と開発スピードのバランスを取ることが求められます。しかし、現場のエンジニアの皆さまは、「システムの信頼性を確保しながら、どうやってスピーディに新機能をリリースできるのか?」というジレンマを抱えているのではないでしょうか。
そんな課題を解決するために生まれたのが「SRE(Site Reliability Engineering)」というアプローチです。本記事では、SREの実践に欠かせない3つのキーワード「エラーバジェット」「ポストモーテム」「トイル」を取り上げ、それぞれの意味と活用法をわかりやすく解説します。
開発チームと運用チームが円滑に連携し、より良いサービスを提供するためのヒントとして、ぜひご一読ください。
2.エラーバジェット(Error Budget):開発スピードと信頼性のバランス
エラーバジェットとは?
エラーバジェットとは、GoogleのSREチームが導入した概念で、SLO(Service Level Objective)を基に「どの程度の障害が許容されるか」を数値化したものです(出典: O'Reilly『Site Reliability Engineering』)。この考え方により、開発チームは安全な範囲で新機能をリリースでき、信頼性とイノベーションのバランスを取ることが可能になります。
事例:エラーバジェットの活用によるデプロイ最適化
あるクラウドサービス企業では、「99.95%の可用性」をSLOとして設定し、それを超えない範囲で開発を進める仕組みを導入しました。この仕組み(エラーバジェット)を活用することで以下のような運用が可能になります。
- SLOが安全な範囲内では積極的に新機能をリリース
- 障害が発生し、エラーバジェットが枯渇するとデプロイを制限し品質向上に注力
このアプローチにより、開発チームと運用チームは共通の指標を持ち、デプロイのリスクを定量化しながらバランスの取れた開発サイクルを実現できます。
注意すべき点
エラーバジェットをうまく活用しないと、
- 障害が発生しているのに開発を優先してしまう
- 逆に慎重になりすぎて、開発スピードが落ちる
GoogleのSREチームは、「エラーバジェットは計画的に活用することが重要であり、完全になくすことを目標にするのではない」と述べています(出典: 『Site Reliability Engineering』)。つまり、信頼性を確保しつつ、エラーバジェットを最大限活用することで、開発のスピードと安定性の最適なバランスを維持することが求められます。
3.ポストモーテム(Postmortem) : 障害から学ぶ文化
ポストモーテムとは?
ポストモーテムは、システム障害発生後に実施する詳細な分析プロセスであり、GoogleのSREチームによって確立されました。このプロセスの目的は、「誰がミスをしたか」ではなく、「なぜミスが起こったのか」を理解し、再発防止のための対策を講じることです(出典: O'Reilly『Site Reliability Engineering』)。
事例:ポストモーテムの導入による障害対応の改善
あるeコマース企業では、過去に大規模なシステム障害を経験しました。この障害は、データベースの負荷増大と適切なスケーリング対策の不足が原因で発生しました。復旧には数時間を要し、多くのユーザーがアクセスできない状況となり、顧客満足度にも悪影響を及ぼしました。
この経験を踏まえ、同社ではポストモーテムの文化を導入し、以下の取り組みを実施しました。
- すべての重大な障害について詳細なレポートを作成
- 障害の根本原因を特定し、システム改善につなげる
- 関係者全員で共有し、今後の運用改善に活かす
この取り組みにより、同社の障害対応プロセスは大幅に向上し、類似の問題が発生する頻度が減少しました。また、ポストモーテムの実施を通じて、技術的な改善だけでなく、チーム全体の障害対応スキルの向上にもつながりました。
Googleは、ポストモーテムを「技術的な進化を加速させるための手段」と位置づけており、単なる問題報告ではなく、組織全体での学習と改善を目的とすることが重要だと強調しています。組織的にポストモーテムを実施し、継続的に改善を積み重ねることが、より信頼性の高いシステム運用につながるのです。
注意すべき点
ポストモーテムを有効に機能させるには、
- 「責任追及」ではなく「学びの場」として運用する
- 根本原因を明確にし、対策を具体的に定める
4.トイル(Toil) : 非効率な運用作業を削減する
トイルとは?
Googleの定義によると、トイルとは「手作業が多く、反復的で、自動化可能な運用作業」を指します。SREの基本理念のひとつに「トイルの削減」があり、エンジニアがより価値のある作業に集中できるようにすることが求められます(出典: O'Reilly『The Site Reliability Workbook』)。
事例:トイル削減による運用の効率化
あるWebサービス企業では、システム監視のアラート対応がエンジニアにとって大きな負担となっていました。頻繁に発生するアラートへの対応に多くの時間を取られ、本来注力すべき開発業務に影響が出ていたのです。
そこで、同社は以下の取り組みを実施しました。
- 繰り返し発生するアラートの自動対応スクリプトを作成
- ログ分析の自動化を導入し、手作業を削減
- 定期的なメンテナンス作業を自動化
これらの取り組みにより、エンジニアの手作業が大幅に削減され、より価値のある業務に集中できるようになりました。
この手法はGoogleのSREチームでも採用されており、Googleは「SREは運用作業の50%以上をトイルの削減に使うべき」と推奨しています。つまり、SREの役割は単なるシステム管理ではなく、運用の自動化と効率化を進めることで、信頼性の高いサービスを維持しながら開発のスピードを向上させることにあります。
注意すべき点
トイル削減を効果的に進めるには、
- 「単なる自動化」ではなく、本質的な業務改善を目指す
- 過剰な自動化によるシステムの複雑化を避ける
- SLO(サービスレベル目標)とのバランスを取る
- チーム全体での合意を形成する
5.まとめ
SREの現場では、「エラーバジェット」「ポストモーテム」「トイル」といった概念が、システムの安定性と開発の柔軟性を支える重要な要素として機能しています。
- エラーバジェットを活用することで、開発スピードと安定性のバランスを最適化
- ポストモーテムを実施することで、障害対応の質を向上させ、継続的な改善を促進
- トイルを削減することで、エンジニアの生産性を向上させ、より価値のある作業に集中可能に
これらの概念をうまく組み合わせることで、信頼性の高いシステム運用を実現し、開発スピードを維持することができます。アクセルユニバースでは、これらの手法を活用し、システムの安定性を最大化するソリューションを提供しています。ぜひ、貴社のSRE戦略にもご活用ください。