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SREを外部委託するメリットと課題:適切なパートナー選びの重要性

2024.10.17 竹中 涼香
SRE コラム
SREを外部委託するメリットと課題:適切なパートナー選びの重要性

  1. 導入
  2. SREにおける視点の違い
  3. SREを外部に委託する利点
  4. SRE外部委託の課題とコストの問題
  5. 自社の一員として動いてくれるSREパートナーを選ぶ
  6. SREを社内で運用するか外部に委託するかの選択
  7. まとめ


SRE(Site Reliability Engineering)の外部委託における利点と課題について、システム運用の効率化とコスト管理の観点で適切な委託先の選び方を解説します。


1. 導入

SREは、システムの安定運用と信頼性向上を実現するために不可欠な役割を果たします。特に、システムの障害発生リスクを最小限に抑え、サービスの継続的な提供を保証することが重要です。しかし、企業がこのSREの役割をどのように担うかという選択は、システムの規模や企業のリソース状況に大きく左右されます。SREを社内で構築し運用するか、それとも外部に委託するかは、企業がシステム運用において直面する大きな課題の一つです。本記事では、SREを外部に委託することの利点と課題、そして成功に導くための適切な委託先の選び方について詳しく説明します。


2. SREにおける視点の違い

SREの基本的な目的は、システムの信頼性を高め、サービスの停止や障害を防ぐことです。これには、システムの自動化、継続的なモニタリング、障害対応体制の強化などが含まれます。技術的には、インフラの冗長化や障害時のフェイルオーバー、負荷分散の最適化などを実施することがSREの重要な業務です。

しかし、ビジネス視点でのSREの役割は、単にシステムを安定的に動作させるだけでは不十分です。企業が成長し、ビジネスの要求が高度になるにつれて、SREの目的は、システムの安定運用をベースに、エンドユーザー体験の向上や業務効率の改善を目指すものに変わります。つまり、技術的なパフォーマンスの最適化だけでなく、最終的にビジネス全体にどう貢献できるかがSREの評価指標となります。SREは、システム運用にとどまらず、企業の戦略的なビジネス目標に向けて、顧客体験を改善し、コスト削減や運用効率化を通じて、企業全体の成長を支える役割も担っているのです。


3. SREを外部に委託する利点

SREを外部に委託する利点

企業がSREを外部に委託する理由はさまざまですが、その主な利点は以下の通りです。


3-1. 専門的な知識と経験の活用

外部のSREチームは、さまざまな業界やプロジェクトで培った専門的な知識と経験を持っています。彼らは、特に大規模で複雑なシステムや、マイクロサービスアーキテクチャを採用している企業において、その知識を活かして迅速かつ効果的に問題解決を図ります。たとえば、オンプレミスからクラウドへの移行や、クラウドネイティブな環境での運用効率化など、社内チームでは得難い専門的なスキルを提供することができます。


3-2. 柔軟な人的リソースの活用

外部委託によって、企業はリソースを柔軟に活用することが可能です。社内でSREチームを固定費として維持するよりも、外部のSREリソースを必要に応じて変動費として活用できるため、コスト管理がしやすくなります。たとえば、繁忙期や新しいプロジェクトの立ち上げ時に追加リソースが必要になった場合、外部のSREチームを一時的に増強することで、短期間での対応が可能となります。


3-3. 高い対応力とスピード

外部のSREチームは、複数のプロジェクトを経験しているため、問題解決や障害対応のスピードに優れています。例えば、突発的なシステム障害が発生した場合、経験豊富な外部のSREチームは迅速に原因を特定し、最適な解決策を実行します。また、24時間365日の対応が求められるような運用環境において、外部委託はスピーディな対応と高い信頼性を提供します。


4. SRE外部委託の課題とコストの問題

しかし、SREの外部委託にはいくつかの課題があります。最も大きな課題はコストの問題です。外部のSREチームを活用する場合、特に長期間にわたるプロジェクトでは、社内でSREを運用する場合と比較してコストが高くなることがあります。契約形態やサービス内容によっては、予算を超過するリスクもあります。そのため、企業はコスト対効果を十分に考慮し、運用効率を維持しつつ、費用を適切に管理する必要があります。

また、外部のSREチームが企業のビジネス戦略や目標を理解しているかどうかも重要なポイントです。単なる技術的な問題解決だけでなく、企業全体の目標にどのように貢献できるかを考える外部チームと連携することが不可欠です。これを実現するには、定期的なコミュニケーションと、目標に対する明確な期待値の設定が必要です。


5. 自社の一員として動いてくれるSREパートナーを選ぶ

SREを外部に委託する際には、単に技術力や価格だけで選ぶのではなく、「自社の一員として動いてくれる」パートナーを選ぶことが重要です。従来のシステム開発においては、顧客からの依頼に基づいて開発会社が対応するという形が一般的でしたが、SREはそれとは異なるアプローチが求められます。

SREの外部委託においては、外部のSREチームが単に顧客の要求に応じるだけでなく、プロアクティブに課題を発掘し、解決策を提案することが重要です。外部チームが率先してシステムの潜在的な問題を見つけ、顧客が気づいていないリスクや改善点を提案することで、システムの安定性やパフォーマンスを向上させることができます。これが、SREを外部に委託する際の真の価値です。

企業は、単なる技術的なサポートを超えて、ビジネス全体に貢献できる外部パートナーを選ぶことが、長期的な成功への鍵となります。このようなパートナーを見つけることで、企業はシステム運用の安定性を確保しつつ、エンドユーザー体験の向上やビジネス価値の最大化を実現できます。


6. SREを社内で運用するか外部に委託するかの選択

SREを社内で運用するか、外部に委託するかの判断は、企業の規模や戦略によって異なります。社内に専任のSREチームを構築することで、特定のプロジェクトや業務に深く関与し、企業のビジネス目標に沿った運用が可能となります。しかし、社内リソースの制約や、システムの複雑化による負荷増加を考慮すると、外部に委託する選択肢も検討する価値があります。

特に、新規サービスの導入や、大規模なシステム更新を控えている場合、外部のSREチームを活用することで、短期間での立ち上げや運用を成功させることができます。企業は、自社の現状と将来的なニーズを踏まえ、最適なSRE戦略を選択することが重要です。

当社では、上記の間をとって、お客様社内へのSREチームの立ち上げを実施することもできます。具体的には、数名のお客様SREチームに経験豊富な当社メンバーも数名参画し、チームの習熟度を高めながら、お客様SREチームがひとり立ちすることを支援しています。


7. まとめ

SREに外部委託、社内チームそれぞれのメリット・デメリット

SREを外部に委託することは、システムの信頼性向上や運用効率化において多くのメリットをもたらします。外部委託による柔軟なリソース活用や、豊富な経験を持つチームによる迅速な対応は、特に大規模なシステム運用において有効です。しかし、外部委託にはコストや適切なパートナー選びといった課題も伴います。

SREの外部委託を成功させるためには、単なる技術的なサポートに留まらず、企業のビジネス目標やエンドユーザー体験にまで貢献できる外部パートナーを選ぶことが不可欠です。SREを自社の成長戦略にどのように組み込むかを明確にし、信頼できるパートナーと連携することで、システム運用の最適化と企業の成長を両立させることが可能です。

SREの外部委託に関するご相談や詳細については、ぜひお問い合わせください。貴社のニーズに合わせた最適なソリューションを提供し、システム運用の成功を支援します。




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