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事例

ヒントはお客様に!スマートフォンアプリで簡易水質検査を実現した苦労と成功の秘訣

2022.09.29
AWS サービス開発

      株式会社共立理化学研究所
    • 代表取締役 岡内 俊太郎様(写真左から2番目)
    • 開発部 永井 孝様(写真左)
      AUC システム部
    • 竹中 涼香(写真右から2番目)
    • 今村 幸平(写真右)


"ブンセキをもっと身近にする"を掲げる、誰でもどこでもできる水質の簡易分析器具のメーカーである共立理化学研究所(https://kyoritsu-lab.co.jp/)の代表取締役 岡内様と永井様にお話を伺いました。


本日はよろしくお願いいたします!まず、簡易水質分析器具パックテスト®をiOSアプリにされたきっかけをお伺いさせてください。

岡内 俊太郎さん(以降 岡内)
開発に着手した、2019年当時、将来にわたり半導体製品の供給不足が予想されたことや、メーカーとしてパックテストのユーザーと直接つながれていないことに対する不安を肌で感じていました。私たちのパックテストと、スマートフォンを結びつけることで、その不安が解消されるのでは?と考えたことがきっかけです。

開発部 永井 孝さん(以降 永井)
加えて、当時世の中のスマホの所有率は80%程度に到達するか、という状況でした。数年後にはもっと所有率は増加して、最も身近なデバイスになることは想像ができました。
私たちのパックテストはよくユーザーから、"最も簡単な水質測定器"と評されることもあり、最も身近なデバイスであるスマートフォンと"最も簡単な水質測定器"を掛け合わせることができれば、最も身近な水質測定器になるのでは?という考えに至ったわけです。


ブンセキをもっと身近にするための挑戦

なぜ開発パートナーとしてアクセルユニバース(AUC)をお選びいただいたのでしょうか?

永井
私達は、パックテストのシステム化はもちろん、アプリ開発自体が初めてでした。加えて、同じ業界の方に話を伺っても事例がなく、答えがない状況でした。そんな状況でのパートナー選定は、私達のバリューである"共に立つ"ことができるかどうかと、世の中にない、新しいサービスの開発になるので、まずやってみる、という姿勢で臨めるか、がポイントでした。そこでAUCさんの「積極的に挑戦していこう」というスタンスと合致したことが決め手です。


どのようにプロジェクトを進めていかれたのですか?

永井
AUCさんとは、定期的な打合せ・テキストでのやり取りをして進めていきました。プロジェクト開発直後は、サービス企画の概要について、詰めるところも多かったです。そこから、アプリの重要な部分である、測定機構についても並行して検討をしていきました。測定機構については、私たちで検討したロジックを、AUCさんに試作していただき、評価を繰り返していましたね。リリース前はだいぶやり取りは密だったと思います。
リリース後の最近は、私達からユーザーから頂く声や、ちょっとした機能追加などで、「こういうことがしたい」と伝え、AUCさんから「こういうやり方ができる」のやり取りが多いです。


初めての取り組みで悩まれることが多かったと思います。企画からリリースまでのプロジェクトで苦戦されたポイントを教えて下さい。

永井
苦戦ポイントは多かったように思います。
その一つが目線合わせです。プロジェクトの最初は、私達の業界での"当たり前"とAUCさんの業界での"当たり前"に距離があったと思います。私たちの技術や考えを共有するにはどうしたらよいか、距離をどう埋めていくかも注力した点だと思います。頻度高く打合せを重ねて、目線合わせをしながら、双方の強みを生かした役割を定めることができました。

一番悩んだところは、潜在的なユーザーの声をシステムに反映させる企画部分です。AUCさんも驚いた点だと思うのですが、私どもは実はユーザーと直接つながれる機会がとても少ないのです。
そんな中で、ユーザーはどのような方々なのか、何を考えていらっしゃるのか...。プロジェクト開始段階は、「なにを作るか」よりも、ある程度の想定と期待するペルソナを仮に設定して、カスタマージャーニーマップを作るフェーズに多くの時間を割きました。私どもにとっては、ペルソナを作ることすら初めてのことで、不要なペルソナを設定していた...など苦戦も多かったです。


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成功のポイントはお客様ありきのサービスにしたこと

既にパックテストがある中でも、いきなり何を作るのかではなく、まずはお客様の解像度を上げて、どのような価値をお客様に届けるかを考えられたのですね。

永井
そうですね。まずはユーザーへの理解と、アプリの活用のされ方を検討しました。ただ、直接つながれていないという事から、精度は高くなかったように思います。サービスリリースして、多くの方にお使いいただいた今でこそ、ようやく少し、どういうユーザーがどのように使ってくださっているのか解像度が上がってきたように感じます。直接つながれてきた今、頂戴したご意見を元に、今後も、より価値のあるものを提供するため、新たな機能の開発を続けていきたいです。


よりお客様に受け入れていただけるようにAUCから提案したポイントはどこですか?

AUC 今村 幸平(以降 今村)
実は、当初の計画はもっと大きかったです。全ての機能を開発していくと、リリースまでに時間がかかってしまいそうでした。なので、カスタマージャーニーマップを踏まえた上で、最も効果的なファーストリリースのスコープを検討しました。
機能ありきではなく、実際に使用するお客様ありきで、どんな使われ方をするか、機能が必要かに重点を置いて検討することがポイントです。リリース後の今でも、サービスの使われ方や、お客様のご要望を膨らませて、継続的に改修しています。


永井
最初は期間的な制約があり、着手して1年後にはリリースしようという計画でした。そのスケジュールで全機能を搭載するのは難しい。さらに、先程もお伝えしましたがお客様の解像度も高くないこともありました。となると、いいと思った機能が将来的に不要になる可能性もありました。そこで共立のサービスとして成り立つもので、お客様にとって必要な機能はなにかというところで絞り込んで行きました。搭載しなかった機能は、今後の改修にもつながっていくところです。


共に挑戦できるパートナー

AUCとして工夫した点や新たに挑戦した点にはどういったものがありますか?

今村
前提として、このサービスは、精度高く測定する必要があるというゴールが決まっていました。はじめに、測定部分を機械学習で行う案があり、ここの技術検証を進めていきました。

カメラでパックテストの発色を撮影し、画像から濃度を測定する部分の技術的な難易度が高いことは分かっていましたが、実現可能性はあり、挑戦することにしました。結果として、濃度の算出に機械学習は採用せず、別の方法を採用しましたが、その過程で調査検証した技術、画像補正やカメラ撮影時のパラメータの調整は今のサービスに組み込まれています。

当初のアイデアを採用しなかったことで、結果として全てが無駄になるのではなく、他でも転用できる部分を切り分けて効率的に進めることを意識しています。


今のお話のように、すぐに答えが出ず、苦労した時期もあったと思います。苦しい時期でも信頼関係を維持できた秘訣はありますか?

永井
期間的な制限による焦りもお互いにあって、本当に苦労した時期がありましたね(笑)
私は『ベンダー』という言い方は好きではなく、共に立つ『パートナー』と思っています。
お互いの強みを生かして弱みを補完できるパートナーとして、私達が思いついたアイデアを投げかけたら、AUCさんは「できます」「できません」だけでなく、その前段階の「その目的を達成するなら、このアプローチが良い」や、その先段階の、「こうしたらもっと良い」という答えをいただけるので信頼できたのでは、と思います。


今村
共立理化学研究所さんは、分析器具のメーカーとして、AUCが思いつかないアイデアを提供してくださり、そこから検討を開始したこともあります。我々は専門分野が違い、アプローチも違いますが、提案したことに対してお互いに目線を合わせて、議論できたので、相乗効果が生まれ、よいアプローチにつながったのではと感じています。


例えば、インフラはAWSを採用していますが、選定はAUCにお任せいただいたと聞いています。背景などお伺いできますか?

今村
AWSは、サービスの安定運用が可能なことから、AUCで知見が多く、今回の開発でも最適な構成を提案しやすいと思ったからです。
このサービスは、画像配信とファイル配信があるため、CloudFrontを利用していますし、これらの送信はAmazon SESを利用しています。今後の展望であるプッシュ通知の搭載を考慮して、弊社知見のあるAmazon SNSの利用を想定しています。今後、機能がさらに増えていくことが決まっているため、マネージドサービスが充実していて拡張しやすいAWSを選定しました。


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お客様の声を活かして今後のサービスを企画する

現在も、ダウンロード数が順調に増えていらっしゃると伺いました。増加した要因やユーザーからのご反応にはどのようなものがありますか?

岡内 
私たちから配信する情報がお客様に到達するまでの時間がかかることは、既存製品の販売動向からわかっていました。そんな状況でも、ダウンロード数を増加できた要因として、一般的なDMだけでなく、プロジェクトチームで提案して実行した、認知度の向上施策が大きいのでは、と思っています。細かい部分は色々ありますが、一つにパックテストの取扱説明書にアプリ導入のQRコードを入れて既存のパックテストユーザーへの認知を上げたことなどがあると思います。


永井
少しだけ、補足するとこのアプリはパックテストの測定ツールです。そのため、アプリの提案先は大きく、既存のパックテストユーザーか、パックテストをお使いでないお客様かに分けられます。その中で、既存のパックテストユーザーへの認知向上をまず狙った、というわけです。

お客様の声としては、無償で手軽に数値化したいというご要望が叶えられていることが分かっています。また、測定結果を手書きで管理するのではなく、デジタル管理したいというご要望にも対応できています。

意外だった事例としては、パックテストは色の濃淡を人の感覚で判断するので、判定した結果を疑われてしまう事があったそうです。このような場合でも、システムで客観的に測定した結果であることが、判断の信憑性を高めているそうです。

他にも、YouTubeの中でご使用いただくなど、私達が把握しきれていない場面でも活用いただいています。


老若男女が使えるサービスなのですね。家庭で使うときも準備が少なく、気軽に使用できることで、"ブンセキをもっと身近にする"に貢献しているのですね。


今後のサービスやダウンロード数などの拡張について、どのような展望を描いていらっしゃいますか?

永井
ダウンロード数の面ですが、現時点のダウンロード数は4,000件程です。

今後は、ユーザーからのヒアリングなどで得られたパックテストのユースケースを拡充させて新規のお客様へのご提案も増やしていきたいと考えています。今は、工場排水の管理での利用が多いのですが、私たちがまだつながれていない潜在的なお客様は他の分野にも多くいらっしゃいます。全く別の分野での認知を広げられるようにできれば、既存のパックテストからのユーザーと、ユースケースから流入いただく新規のユーザーを合わせて、2025年には倍のレベルには到達できると試算しています。
また、現時点でアクティブなユーザーはダウンロードユーザーの30%程です。その30%を引き上げていきたいです。

サービスの拡充については、ユーザーのお声を元に、どうしたらお客様にとって、ブンセキがもっと身近になるかを考えながら、拡充していきたいです。


身近に使えるサービスのため、今後、より多くの人の環境意識が高まることで、利用ユーザも増えていくと見込まれますね。本日はお時間いただきありがとうございます!



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