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データと現場の声をAIエージェントが分析!「SMART」で作る新しい店舗運営のカタチ

2026.05.28 小西 美羽
AWS データ分析 生成AI
データと現場の声をAIエージェントが分析!「SMART」で作る新しい店舗運営のカタチ

  1. はじめに
  2. 環境構築手順
  3. Store Manager Agentで実現できること
  4. まとめ


1.はじめに

店舗運営において、こんなお悩みはありませんか。

  • 売上データは見ているが、次に何をすべきか判断に迷う
  • 売場づくりや品揃えが、どうしてもベテラン頼みになってしまう
  • 在庫・売上・時間帯など、考えるべき要素が多すぎる
  • 数字の振り返りはしているものの、改善アクションに落とし込めない


こうした課題は、特定の業種だけのものではありません。
例えば、

  • スーパーマーケットでは、時間帯等を踏まえた発注や値引き判断
  • コンビニでは、限られた売場での品揃えや補充タイミングの最適化
  • アパレル店舗では、売場づくりやセールタイミングの判断
  • ドラッグストアでは、多数の商品カテゴリを踏まえた陳列や販促設計
  • 家電量販店では、在庫・販売戦略と接客のバランスをみた在庫管理


といったように、店舗運営では日々さまざまな意思決定が求められています。

一つひとつの判断はシンプルに見えても、実際には売上・在庫・時間帯・顧客動向など、多数の要素が複雑に絡み合っています。 その結果、多くの現場では経験豊富な店長やベテランスタッフの判断に依存しているケースも少なくありません。 また、多くの企業ではPOSデータや売上データは蓄積されているものの、「次に何をすべきか」という具体的な改善行動まで落とし込めていないケースも多くあります。

こうした背景の中で注目されているのが、AIエージェントが店舗運営の意思決定を支援する、 店舗運営支援エージェント によるアプローチです。
Store Manager Agent for Retail Tech(SMART) は、売上データや現場の声を店舗運営支援エージェントが分析し、「今どのような改善行動を取るべきか」を支援するサンプルアプリケーションです。なお、このアプリケーションはAWSよりOSSとしてGitHub上で公開されているため、誰でもソースコードを確認したり、自身の環境で試したりすることができます。

本記事では、実際にStore Manager Agent for Retail Techを構築・検証してみた結果をご紹介します。


2.環境構築手順

Store Manager Agent for Retail Techの構成は下記の通りです。

architecture.webp

主要コンポーネント

アプリケーション構成

  • S3: フロントエンドアセットの配信
  • CloudFront: グローバルCDN配信
  • WAF: アクセス制御
  • API Gateway: REST APIエンドポイント
  • Lambda: API処理とビジネスロジック実行
  • AgentCore Runtime: Strands Agentsの実行環境
  • AgentCore Memory: エージェントの会話履歴管理


データベース構成

  • S3 Tables: Iceberg形式のテーブルストレージ
  • Amazon Athena: SQLベースのデータクエリエンジン


構築手順の概要

AWS公式の DEPLOYMENT.md に従ってデプロイを進めていきます。本ブログでは今回実行した手順と、注意点を記載します。

1.環境のセットアップ

認証情報の設定を行います。当社はAWS IAM Identity Centerからのログインを行っているため、今回はaws configure ssoにて認証情報を設定しました。
デプロイ先の AWS アカウントとリージョンを決定します。今回は環境変数でリージョン指定を行いました。
ローカル環境において、Lambdaで作成したAPIの修正や追加などの開発を行う場合はDockerをセットアップしましょう。今回はDockerを使用しませんでしたが、アプリケーションは問題なく動作してくれました。

2.AWS 環境の準備

自分が環境を構築するリージョンで、 Amazon Bedrockの利用ができるかを確認しましょう。
AWSマネジメントコンソールを開き、リージョンを設定してAmazon Bedrockを開きます。左メニューのテストからPlaygroundを選択して、カテゴリはAnthropic、モデルはClaude Haiku4.5、推論は推論プロファイルのJP Anthropic Claude Haiku4.5を選択して適用します。
呼び出しが成功すれば、対象リージョンでClaude Haiku4.5が利用できることがわかります。
次に、Amazon API Gateway のタイムアウトに関するクォータ(Quota)緩和申請を行います。 設定はAWSマネジメントコンソールのTimeout Quota (Maximum integration timeout in milliseconds) から行うことができます。デプロイ対象のリージョンであることを確認し、申請しましょう。
次に、Amazon S3 Tables と分析サービスの統合設定を行います。S3 tables コンソール画面から、簡単に設定することができました。

3.プロジェクトの取得

今回はgit cloneを行いました。

4.AWS CDK 環境の準備

npm モジュールのインストールを行います。 初回デプロイ時のみ、AWS CDK の Bootstrap 実行を行います。 次に、 AWS Lake Formation で2つのプリンシパルを追加します。CLIでもコンソールでも設定できますが、今回はCLIで実行しました。

5.CDK 設定のカスタマイズ

アプリケーション画面でのユーザー作成可否、サインアップ可能なメールアドレスのドメイン制限、IP 制限などのパラメータを調整することができます。
今回はデフォルトのままで設定しました。

6.CDK デプロイ

cdk deploy を実行します。私の場合は10分程度で終了しました。

7.初期データのセットアップ

Amazon S3 Tables のテーブルを作成し、テストデータを投入します。

↓実際にS3に投入されるテーブル一覧。例えば下から2つ目の「t_sales」には、売上情報が登録されています。

スクリーンショット 2026-05-21 13.37.01.webp


↓「t_sales」のデータ

スクリーンショット 2026-05-21 14.24.35.webp

8.デプロイ結果の確認

AWS CloudFormation のスタックの出力から、アプリケーションの URL を取得しましょう。

9.ユーザー作成

AgentとAdminでそれぞれ初回ログイン用のユーザーを作成しましょう。Adminユーザーは、Agentユーザーに提供されるサービスに加えて、アンケート質問の編集、メッセージ管理等の機能を使用することができます。

10.Amazon Bedrock モデル呼び出し権限の追加

2025年10月に実施された「モデルアクセスの自動有効化」に関する仕様変更に伴い、「Daily Insights」機能で追加の権限が必要となる場合があります。
その場合、sample-store-manager-agent-for-retail-tech/cdk/lib/constructs/agentcore-resources.ts に以下の AWS Marketplace 関連の権限を付与することで解消する可能性があります。

  • aws-marketplace:ViewSubscriptions
  • aws-marketplace:Subscribe


3. Store Manager Agentで実現できること

早速Agentユーザーでログインしてみます。ログインすると、以下のような画面になりました。


スクリーンショット 2026-05-20 12.52.03.webp

機能は大きく分けて

1. Daily Survey(日次アンケート、AIチャット)
2. Daily Insights(インサイト生成)
3. History(Daily SurveyとDaily Insightsの履歴)

の3つがあり、それぞれの機能はDashboardまたは左メニューから開くことができます。

(1)Daily Survey(日次アンケート、AIチャット)

Daily Surveyは、日次アンケートとAIチャットが連動した機能です。
スタッフがその日の固定アンケートに回答すると、AIエージェントがその回答内容をトリガーにして、自然な対話形式でさらに深いヒアリングを開始します。
最初に表示されるアンケートにすべて回答すると、AIチャットに移動することができます。


スクリーンショット 2026-05-21 12.02.54.webp


AIチャット画面では、AIエージェントがアンケートに関連した追加質問を行います。
その質問に答えると、AIエージェントがさらに深堀り質問をしてくれるので、それに答えていく形式で会話を進めます。
例えば今回は、「パンツがよく売れたが、それはなぜか?」という観点で質問をされました。その後、「新商品のデニムのデザインが人気だったから」と回答すると、「どんなお客様に人気だったか?」というように深堀り質問がありました。


AIチャット例1.webp


AIチャット例2.webp


このように、AIエージェントの質問に答えるだけで一日の営業の振り返りを行うことができ、手書きやExcelでの日報作成にかかっていた時間を店舗運営や接客に充てることができます。
また、現場のスタッフから日々の「生の声」を収集・蓄積することで、今後の仕入れや販売戦略の立案、商品の強みの再発見につなげることができます。

(2)Daily Insights(インサイト生成)

Daily Insightsでは、Daily SurveyによるアンケートやAIチャットから得られた定性データと、売上や来客数などの定量データが掛け合わせて分析され、AIエージェントが改善提案付きレポートを生成します。
例えば今回のフィードバックでは、まず昨日の売上や来客数、購入件数、購入率を振り返ったあとに分析に入ります。


Insights 売上達成分析.webp


1. 売上達成/阻害要因の分析

  • 定量データより、来客数の増加に対して購入件数は変化しておらず、来客一人あたりの購入率は低下
  • 定性データより、サービス満足度は高く、スタッフの営業評価も高い

よって、サービス品質は良好だが、商品ラインナップや価格設定、販売促進の工夫が不足していた可能性が考えられる。


Insights AIの気づき.webp


2. AIの気づき

  • 商品の品揃え、価格、販売提案に課題がある可能性がある
  • サービス満足度は高いが購買行動に結びついていない

Insights アクション提案.webp


3. アクション提案

  • 購入率を上げるため、スタッフへの販売スキル研修を実施する
  • 好調なパンツカテゴリーの在庫を確保しつつ、トップスや小物の売上向上策を検討する

などのフィードバックが得られました。


Daily Insights機能では、単なる日報の記録やレポート出力ではなく、売上データに加え、

  • どの商品を強化すべきか
  • どの売場改善を優先すべきか
  • どの時間帯の施策を見直すべきか

といった、次のアクションにつながる示唆を得られる点が特徴です。
なお、売上や来客数などの定量データは別途S3に登録する必要があります。

<サンプルデータの利用に際して注意点>
初期デプロイ時に投入されるテストデータは「前日」および「前々日」のデータです。 システムは直近のデータを参照する仕様のため、デプロイから1日以上経過するとデータが過去のものとなり、Insights 機能が動作しなくなります。 その場合は、再度テストデータを投入してください。

(3)History(Daily SurveyとDaily Insightsの履歴)

Daily SurveyとDaily Insightsの履歴を一覧で確認できる画面です。
他店舗間でもインサイトを共有することができます。

スクリーンショット 2026-05-21 16.12.04.webp


売上データに加え、

  • アンケート回答
  • AIエージェントとの対話履歴
  • 日々の気づき

などの定性データも蓄積されます。
これにより、売上などの定量データだけでは見えなかった「現場の背景」まで含めて分析できるようになります。

(4)Admin

Adminユーザーでログインすると以下の画面になり、左メニューにAdminの画面が増えていることがわかります。
Adminユーザーは管理者専用の機能を使うことができます。


スクリーンショット 2026-05-21 16.09.43.webp

管理者(Admin)専用の機能は以下の2つです。

1. Announcementsの編集(店舗へのお知らせの編集)
2. Survey Questionsの編集(店舗への固定された質問の編集)

ここで編集したお知らせと質問が、Daily Surveyのアンケート画面に反映されます。


4. まとめ

店舗運営では、これまで「経験」や「勘」に依存する意思決定が数多く存在していました。
しかし今後は、AIエージェントによって現場データと日々の気づきを蓄積・分析し、「誰でも改善判断ができる状態」を作れる時代になりつつあります。
特にポイントは以下の4点です。

4-1.店舗スタッフの業務負担軽減と本来業務への集中

手書きやExcelでの日報作成から解放されます。
AIエージェントがスタッフの回答をもとに自然な対話で深掘り質問をしてくれるため、現場の状況を簡単にデータ化できます。
これによって店舗スタッフの事務作業の負担を減らし、スタッフは本来の店舗運営や接客により集中できるようになります。

4-2.データに基づいた客観的フィードバックの早期獲得

AIエージェントとの対話やアンケートから得た「定性データ」と、売上などの「定量データ」を掛け合わせて統合分析された、改善インサイトを取得できます。
また、客観的な分析による「改善提案付きレポート」が自動生成され、店舗側でフィードバックとして受け取ることができます。

4-3.リアルな現場の声の蓄積と、ナレッジの組織的な横展開

これまでの定型フォーマットでは伝わらなかった現場の細かいニュアンスやリアルな声が、構造化されたデータとして蓄積され、本部に届くようになります。
個人の頭の中に留まりがちだった成功事例や工夫がデータとして可視化されるため、店舗間でのナレッジ共有が進み、組織全体の学習と横展開がしやすくなります。

4-4.導入のしやすさと柔軟なカスタマイズ性

GitHubから20分かからずにデプロイが完了し、すぐに利用を開始して効果検証(PoC)に進むことができます。
本部側の管理画面から、アンケートの質問項目(選択式、テキスト、評価など)をノーコードで簡単に追加・編集できます。
プロンプト(テキストファイル)を編集するだけでコードを変更せずにAIエージェントの振る舞いを調整できるほか、SQLを記述してAIエージェントが参照するデータソース(商品情報や在庫など)を拡張することも可能です。


「店舗運営にAIエージェントをどう組み込めるのか」を検討している方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。デモ視聴や、導入時の課題整理・改善提案なども可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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